【EXA KIDS 座談会企画】 九州工業大学大学院 中尾 基 教授編 Vol.3

EXA KIDS 座談会企画 九州工業大学大学院 中尾 基 教授編

プログラミングが教育を変える?

2020年、日本全国の小学校でプログラミング教育がスタートします。

なぜプログラミング教育が必要なのか。

小学校という低学年から必修にする意味とは?

大学で教鞭を執る傍ら、小中学校でも出前講座を開催される
九州工業大学の中尾教授に話を聞きました。

(聞き手:EXA KIDS実行委員)

>>>【vol.2】はコチラ

世の中には”楽しい学び”もある
その事実を知って欲しい

プログラミングで楽しい学び
古林
小学校に行って授業をしたとき、子どもたちの反応で印象に残っていることはありますか。
中尾 教授
プログラミングをしているときの笑顔ですね。

私が普段、講義している学生たちはしっかり集中しているんですが、どこか無気力な印象もあります。

一方で小学生はすごく楽しそうににこにこと笑っています。

古林
楽しみながら学んでいるんですね。
中尾 教授
ええ。

遊びの時間は自然と笑顔が出るでしょう。

授業中や自主学習のときにはそんな明るい表情は出ないのですが、プログラミングをしているときは「嫌いな勉強をしている」という感覚はないようです。

子どもたちには、「嫌にならない勉強がある」ことを伝えたいですね。

古林
Scratchを開発したミッチェル・レズニックさんも全く同じことを言っています。

大学生にプログラミングを教えて喜ばれたことはないけれど、小学生に変数のプログラムを教えると「やった! これで変数性のプログラムが書けるようになった」と喜んだそうです。

中尾 教授
「創造的な学び」に大切な「遊び」の要素ですね。
古林
中尾先生ご自身は、プログラミングを教えられてどんな手応えを感じられましたか。
中尾 教授
アクティブラーニングに有用だということはハッキリしています。

たとえばロボカーの場合でいうと、広い場所で動かしてみることができる。子どもたちがペアになって動かしてみる時間もつくりました。

総合教育やピアラーニングのようにお互いに教え合う活動にも向いています。

講師である私の言葉よりも、学びの主体である子どもたち同士の言葉の方が理解しやすく、深い理解につながるようです。

失敗を経験するための時間
それがプログラミングの授業

プログラミングイメージ
古林
中尾先生にプログラミングの授業を始めたきっかけについてお聞きしたいと思います。

大学の物理や工学の考え方に活かすため、アーテックロボをガイディングの科目として取り入れたそうですね。

中尾 教授
ええ。

4年生や大学院生が取り組む大学最後の教育は卒業研究や修士研究に取り組むこと、つまり「答えのない問題や問題自体を自分で探す」ことです。

このスキルが身に付けば企業に入って製品開発もできるようになる。

古林
テーマを与えられて研究に取り組むのではなく「自ら課題を見つける力」ですね。
中尾 教授
大学1~3年生は基本の学問をします。その間は常に「答えのある」学習です。

それに慣れ過ぎると4年生になっていきなり「答えのない学習」に直面し、戸惑ってしまう。

古林
だからこそ、1年生のときから「答えのない学習」に取り組むんですね。
中尾 教授
その通りです。

その過程で大切なことは、テキストや先生に言われた通りにやって成功することではなく、自分で取り組んで失敗すること。これが研究において大切なことです。

ある条件で失敗したなら、条件を変えてもう一度やってみる。

この繰り返しで新しい発見に出会えます。

この条件では失敗したので、次はこうしたら良いのではないか。

そんな考え方が工学的な思考です。

工学とは、つくって失敗して、それを繰り返すトライアンドエラーの学問なんでです。

古林
まさにプログラミング思考ですね。
中尾 教授
プログラミングなら失敗しても大きなことではないし、失敗が許される場で経験が積めます。

失敗することを恐れるあまり、一歩を踏み出せない子もいますが「失敗は成功の母」という言葉があるように、失敗を経験させてあげることがPBLの役割だと考えています。

古林
なるほど。

失敗を重ねるための時間でもある、と。

中尾 教授
大人になれば社会生活で誰もがしていることですよね。

たとえば奥さんにこう言ったら怒られたけど、こう言ったら喜ばれたとか(笑)。

人間が相手だと、不確定な要素がありますが、対象が物事であれば普遍的ですから。

>>>【vol.4】に続く

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