人の心を掴める”純粋な面白さ”をこれからも追いかけたい/EXA KIDS 2023 インタビュー記事

EXA KIDS 2023 エキスパートコース最優秀賞を受賞した蓬田(よもぎだ)悠太さんにインタビューを行いました。

【エキスパートコース最優秀賞】瓦礫の下の赤い希望 / 蓬田 悠太

▼プレゼンテーションのダイジェスト▼
https://youtube.com/shorts/uTS_43uHmoU?si=Ec-l7dijN8INHZLp

左:蓬田さん
インタビュアー:近藤悟 (EXA KIDS 2023 実行委員長)

ゲームがきっかけで始めたプログラミング
次に挑戦したいのはフォトリアル

受賞おめでとうございます。
今回最優秀賞に輝いた『瓦礫の下の赤い希望』、Blenderの技術には目を見張るものがありました。
こうしたPCを使ったものづくりはいつ頃からはじめましたか?

小学4年生のときですね。
元々ゲームが好きで、ずっとやっているうちに「どうやってつくってるんだろうな」と気になってきて、「自分でも作ってみたいな」と。
それで、色々と調べはじめたのが最初です。

好きなゲームで遊ぶ蓬田さん

なるほど。始めたての頃はどんなことをしていたんですか?

Nintendo Switchのゲームに、『はじめてゲームプログラミング(はじプロ)』というのがあって、それが気になってはじめました。
そこからどんどんハマっていったんですが、まあ子ども向けのゲームソフトなので、できることは限られていて、だんだん物足りなくなってきたんです。それで、本格的にやろうと。
まずは「ゲームのキャラクターを自分でつくって動かしてみたい」と思ったので、ブレンダーに手を出しました。

ゲームを作りたい人は、スクラッチからはじめる人が多い印象なんですが、そこは通らなかったんですね。

そうですね。スクラッチも少しだけさわってはみたんですけど…
最初にさわった『はじプロ』のプログラミング方法が、ノードというブロック同士をつなげていく形だったんです。なので、それに似たスタイルのUnreal Engineをやってみようと思ったんです。

なるほど。スクラッチよりもUnreal Engineの方が、馴染みのある手法だったわけですね。
このあたり、BlenderやUnreal Engineは全て独学で勉強したんですか?
周りにやっている人はいましたか?

いや、いなかったですね。
わからないことを聞ける人もいないし、習おうにもちょうどいいところが見つからなかったので、自分でとにかくやってみて、わからないところはネットで調べて、を繰り返してました。

かなり根気強さが求められますね。
最近こそ、YouTubeなどでも色々情報を探しやすくなっていますが、当時は大変だったんじゃないですか?

本当に大変でした。
知りたい情報を探してみるけどどこにも見つからないといったことも何度もありました

今の中心的なスキルとしては、BlenderとUnreal Engine以外にもありますか?

はい。今回の作品のオープニングはAfter Effectsを使ったので、そのあたりも勉強しています。
あとは、技術的にはそこまでできないですが、Cubaseも使えます。まあでも、一番得意なのはやっぱりBlenderですね。

なるほど。
今後こういうことを学びたい、こういうものを作りたい、といったことはありますか?

フォトリアルな感じのSFを作りたいと思ってます。
これまではどちらかというとアニメ調の映像がメインだったので、もっとリアルで、それでいてSFというか、かっこいい感じの作品を作りたいです。

制作の様子

自分自身が楽しむために
スキルの上達にこだわりたい

そういう「これをつくりたい」という思いは、どこから生まれるものですか?
たとえばBlenderをさわっているうちに「こういうことをやってみたい」という形で生まれるのか、はたまた映画などを見ているときにインスピレーションが湧いてくるのか。

基本的には、「さあ、何か作ろう」というところからはじまりますね。
そのあとで、「何をつくろうかな」とアイデアを考えはじめます。
考えはじめると、「あんな映画あったな」とか、参考になりそうなアイデアも浮かんでくるので。

なるほどなるほど。
自分の作品の特徴は何だと思いますか?

作っているものはノンバーバルが多いんですけど、特徴としては多分、「メッセージを伝える」というよりは、「単純に見ていて面白い」というところが大きいと思いますね。

確かに、今回もそういう作品でしたね。
この「面白い」は、広い意味ですか?

そうですね。その中にもちろん、「笑える」という要素もあり、実際そういう作品を作ったこともあります。

なるほど。
今までゲームをしたり、映画やアニメを見てきた中で、どんな作品に影響を受けましたか?

パッと思い浮かぶのは、PIXERの『ウォーリー』っていうロボット映画ですね。物語的にもすごく良いし、ところどころユーモアもあって笑えて。
とくにすごいと思うのが、キャラクターのほんの少しの表情や動きで、セリフから受ける印象がまったく変わるんですよ。そこが本当にすごいなと思っています。

目の付け所がすごいですね。
では、自分でもあれくらいのものを作ってみたいなと。

一人ではちょっと難しいかもしれません(笑)

あの規模の作品だと、レンダリングだけでものすごい時間がかかりそうですよね。

そう思います。僕の作品でさえ、2日とかかかることもあるので。
2時間の映画作品のレンダリングなんて、考えたくもないですね。それに、一発でうまくいくとも限らないし、途中でなおしたいとこが見つかればまたやり直しなので…

ちなみに普段は、どれくらい制作時間をとっていますか?

元々は、1日平均5時間くらいだったんですけど、最近ちょっと疲れてきて、時間が減ってきてますね。また増やしていきたいと思っています。

それは、なぜ増やしたいと思うのでしょう?
単純にスキルを伸ばしたいのか、それとも、たとえば「こんな仕事がしたい」とか「このコンテストで勝ちたい」とか、目指すものがあるのか。

とにかく、もっとスキルを伸ばしたい、の方ですね。
やっぱり上達を感じられた方が自分でも楽しいし、いつまでも同じレベルのものを作っていたらモチベーションが下がっていっちゃうので。
だから、上達すること自体が大事です。
もちろん、次回のエクサキッズでも勝ちたいと思っているので、そのためにも、とも思います。

自分の基準が上がっていってるわけですね。

そうですね。作れなかったものを作れると自分でも嬉しいので。

3D制作のためにつくった模型

「純粋な面白さ」を追求する
それを評価してもらえたのが嬉しかった

受賞したときは、どんな気持ちでしたか?

やっぱり、うれしかったですね。
ただ結構、自分の作品には自信を持っているので、「頑張ったな」という気持ちでした。

なるほど。「まじで!?」というよりは、「よし!」みたいなニュアンス。

はい。最近は他のコンテストでの受賞などもあって、調子もよかったので。
今、自分の人生のピークがずっと更新されている、みたいな感覚です。

いいですね。
これまで頑張ってきたこと、コツコツ積み上げてきたことが、ちょうどこのタイミングで花開いてきているんですね。

はい。
ただ、色んなコンテストに応募した分、ずっと何かしらを作ってた感じで、忙しかったです。

プロの生活ですね。いくつくらい作ったんですか?

映像作品が、エクサキッズに出したものを含めて2つ、ゲームの作品が2つ、なので合計4つです。

年4つは大変ですね。
コンテストは、子ども向け以外のものにも応募したんですか?

そうですね。出せそうだなと思うコンテストは手当たり次第に応募しました。

他コンテストでの受賞の様子

大人向けのCGコンテストでも全然勝負できそうですね。
そんな、多くのコンテストに参加した蓬田さんから見て、エクサキッズというイベントはどうでしたか?雰囲気だったり、他の作品のことでもいいですが。

色々ほかのコンテストも出てきた中で思ったのは、やっぱりエクサキッズに応募してくる人たちは全体的にレベルが高くて、「すごい!やってみたい!」と思うような作品がいっぱいありました。びっくりしました。

それはよかったです。とくに気になった作品などはありますか?

Aspergillus Artさんの作品ですね。
まだ完成前と言っていましたが、グラフィックもクオリティが高くて、ホラー寄りのコンセプトの中で雰囲気も再現できてて、すごかったです。

Aspergillus Artさんは、去年のチャレンジコースの優勝者ですね。
スキル面もさることながら、コンセプトの極め方や世界観の追い込み方がすさまじいですよね。映画とかの設定集とかをよく読むと言っていました。

(参考)EXA KIDS 2022 チャレンジコース最優秀賞 中澤柊葉さんインタビュー

なるほど。そういうところから、裏設定とかのヒントを得てるってことですね。
色んな制作テーマがあって、本当にすごいとしか言えなかった。

今年もバラエティに富んでいましたね。
ちなみに、コンテストとしてのエクサキッズについて、何か特徴のようなものは感じましたか?

他のコンテストと違うなと思ったのは、コースがチャレンジとエキスパートに分かれてるから、本気で戦うことができることですかね。
子ども向けのコンテストだと、もっと小さい子とかも出ていたりして、「この年齢にしてはすごい」というところで評価されがちな部分があるというか。
もちろんみんな、本気は本気なんですが、そうした年齢的なものと純粋なクオリティの評価とが一緒くたになるところがあって。
その部分が、エクサキッズの場合は2つのコースで分かれてるので、そこはわかりやすくてよかった。

完成度の賞と努力賞が混ざらず、年齢関係なくというところですね。

はい。なので全体的にすごく楽しめました。

ありがとうございます。今後の参考にさせていただきます。
インタビューとしては以上になりますが、最後に「これだけ伝えておきたい」ということがあれば。

僕が作品をつくる上で大事にしてること、信念みたいなところなんですけど、世の中にあるコンテストって、「社会の役にたつもの」みたいな、真面目なテーマに対する答えを評価するようなものが多いじゃないですか。

SDGs、社会課題の解決、みたいな?

そうですそうです。で、それはそれでいいんです。全然いいと思うんです。
でもやっぱり僕は、人の心を掴むのはもっと純粋なものというか、単純な面白さだったり、「見ていて楽しい」と思わせる何かだったり、そういうものだと思うから。僕はそこを真っ直ぐ頑張りたい。
人が見て楽しいなと思える、もっと見たいなと思えるような作品を作っていきたい。
さっきのエクサキッズの特徴の話なんですけど、そういう意味で真面目なコンテストが多い中で、エクサキッズは、そういう純粋な部分を評価してくれた気がして、すごくうれしかったです。

色々コンテストに出てるからこそ、思うことがあるわけですね。
でも、蓬田さんの大事にしている部分は、エクサキッズとしてもかなり意識している部分なので、そう言ってもらえるとうれしいです。

たとえば今回の作品も、一応は環境汚染がテーマではあるんですけど、これを見て「環境汚染ってよくないな。気をつけよう」って思ってほしいわけではないんです。単純に「環境汚染」を題材にして、そこから面白い作品、作りたいものを作っただけ。
「人が面白いと思う作品」をつくるのって大変なんですけど、それを作ってる時が自分でも面白いので、そこだけを追求していきたいと思っています。

なるほど。
最近は、たとえば誰もが知っているような映画を作っている会社でも、メッセージ性により過ぎた現状からエンタメの本質へ回帰していこうという動きもあるみたいですからね。そういう意味でも、とても時代を捉えているように思います。来年の挑戦も楽しみにしてます。今日はありがとうございました。

ありがとうございました。

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