プログラミングが教育を変える?
2020年、日本全国の小学校でプログラミング教育がスタートします。
なぜプログラミング教育が必要なのか。
小学校という低学年から必修にする意味とは?
大学で教鞭を執る傍ら、小中学校でも出前講座を開催される
九州工業大学の中尾教授に話を聞きました。
(聞き手:EXA KIDS実行委員)
【登壇者プロフィール】
九州工業大学大学院 工学研究院
中尾 基(なかお・もとい)教授
表面物理・半導体電子工学を専門とし、2007年から「PBL教育」の出前講座をスタートし、九州、山口、島根など各県の小中高校で講義をしている。累計140回超。
★研究室公式HP:https://www.mns.kyutech.ac.jp/~nakao-m/
大学生の頭がだんだん”固く”なっている?
PBL(project based leaning)に基づいた「システム工学」を開講しています。
PBLとは「課題解決型学習」のことで、もともとは大学生向けのアクティブな学びのためのプログラムとして実施していました。
フレームワークの設定から計画の立案、 プロジェクト実行を学生が主体で進めます。
目標に向かって意欲的に取り組むことで学習動機を高め、通常の講義では得られない課題解決能力やプレゼンテーション能力、論理的思考力、モデリング能力、デザイン力などを身に付けることができます。
そしてようやく4年生になって自分で課題を決めて研究に取り組む「自主的な学習(卒業研究)」に取り組むんです。
ただ、その頃のは「答えがある」学習に慣れすぎていて「自分で課題を発見する」「課題解決のために自ら考える」という姿勢が身につかない。
そこで凝り固まる前に1年生から取り組めるように変えました。
考え方が固まる前にもっと早い段階から自ら学ぶ姿勢を身に付けてもらう、と。
最初は手応えもあり、私自身も楽しく講義ができていたんですが、だんだんと大学に入ったばかりの18才の子たちでさえ頭が固くなっていることに気が付きました。
つまり、大学1年生でさえも入学までに学んできたものが邪魔をして新しい見方が入っていかないんです。
小学生のうちに「答えのない」世界を
それが中学に行っても同じなんです。
プログラミングを教えるなかでも「答えは何か」「どれが最適解か」を見つけるところから始まっていて、結果や答えばかりを求めてしまう。
だからこそ、まだそういった固定概念に縛られる前の小学生のときからプログラミング始めるべきだと思います。
学問やプログラミングも含めて夢を語れる小学生は素晴らしいな、と思います。
小学校で夢を語っても誰も笑いませんが、中学校で夢を語ると「お前にはそんなの無理だよ」と笑われてしまう。
大学の先生が小学校で授業をする機会がもっと増えると良いなと思います。
小学生に出前講義に行くと、大学生も刺激を受けるんですよ。
小学生は「どうしてこっちに曲がるの?あっちに曲がるの?どうしてうまく行かないんだ?」という好奇心があります。
それが成長するにつれてだんだんとそんな疑問を口に出さなくなっていきました。
本来、学習というのは「空はなぜ青いの?」という好奇心から始まりますが進学するうえでは答えを覚えればいいわけですから、だんだんとそんな疑問を口にしなくなるんですね。
高専の講義を行うときにも感じたことです。
普通の高校と違って高専は5年あるので3年生で受験勉強をする必要はありません。
物理学の面白い話をするのですが、そこでもやはり「どの公式が一番重要ですか?」「この公式はどうしてこうなっているのですか?」という話題になる。
いまや日本全体、ひょっとすると世界全体がそうなっているのかもしれません。
この状況に一石を投じ、「答えを探しに行く」という態度に転換させられるのがプログラミング教育だと思っています。