【EXA KIDS 座談会企画】 九州工業大学大学院 中尾 基 教授編 Vol.5

EXA KIDS 座談会企画 九州工業大学大学院 中尾 基 教授編
EXA KIDS実行委員長の古林と九州工業大学大学院の中尾教授

プログラミングが教育を変える?

2020年、日本全国の小学校でプログラミング教育がスタートします。

小学校という低学年から必修にする意味とは?

大学で教鞭を執る傍ら、小中学校でも出前講座を開催される
九州工業大学の中尾教授に話を聞きました。

(聞き手:EXA KIDS実行委員)

>>>【vol.4】はコチラ

親にも先生にも言えないとき
子どもたちは誰を頼りにする?

中尾 教授
SNS世代というか、中学生のときからSNSを使い出した人は今24~5才ぐらいでしょうか。

友だちのつくり方や集団の中での過ごし方など、社会人になったときに上の世代とギャップがあると聞きます。

古林
育ち方が違うので、もちろん私たち世代の常識は通用しないでしょうね。

たとえばSNSのアカウントは、学校で確立している”自分のキャラクター”くらい大切なもので、簡単には引き渡せないんです。

そこに一つの社会ができ上がっているんです。

中尾 教授
昔なら”学校向けの私”と”家向けの私”がありましたが、今はそれが一つのSNSのアカウントごとにあるということですか。
古林
そうです。

人によっては学校での対人関係よりもサイバー上の方がコミュニケーションが上手です。

そこを断たれるのは本人にとって予想以上にしんどいことになります。

一つ人生を潰されるような感じですね。

中尾 教授
だとすると、その世界を親に見せるでしょうか。
古林
なかなか見せづらいと思います。

現時点でできることは、子どもたちがどのような使い方をしているのかということを親が徹底的に詳しくなること。

それから家庭での話になりますが、「ネットの世界には危険がある」ことを伝えておいて、親が理解者であるという関係性をつくることしかないと思っています。

中尾 教授
保護者であり、理解者である。
古林
ええ。

冒頭にツイッターは「子どもが他県に連れて行かれるくらい強力なツール」という話がありました。

こうした危険や害がメディアで取り沙汰されると、怖い印象を受けますが使っている本人は使うことのメリットが大きいから使っているわけです。

中尾 教授
そうですね。
古林
「こんな危険がある」とだけ伝えると、使っている子どもたちにとっては「大人は分かっていない」と言ってしまうことになります。

こうした状況が続くとまったく話を聞いてくれません。

私たちは学校でも保護者でもなく民間の第3者なのでフランクに「確かに便利で楽しいね。でもこういう危険があるから知っておこう。もしも危なくなったら僕たちにすぐに言ってね」という会話ができます。

中尾 教授
私たちの世代はSNSから受けているメリットをあまり知らないので、デメリットばかり見てしまうのかもしれませんね。

子どもたちにとってはデメリットだけ言われても、釈然としない。

本来は一番の味方なのに一方的に禁止や制限だけされると敵対意識が生まれるかもしれません。

その意味で、気軽に相談できる第三者の立場の人が身近にいると良いですよね。
古林
保健室の先生のような存在ですよね。

いじめられていることを親にも先生にも言えないけれど保健室の先生なら言える。

何でも言える大人が近くにいる。それが大事だと思います。

禁止すれば終わり、ではない
使い方と知恵を得ること

古林
もっと楽観的な見方ですが、グーグルのサイエンスフェアで「SNSいじめのなくし方」というものが出ています。

人を傷つけるようなメッセージが送信されるときに「このメッセージには人を傷つけるような内容が含まれていますが送信しますか?はい、いいえ」のようなポップアップメッセージを出すと、90パーセント以上の中学生が「いいえ」を選ぶそうです。

これは中学生がグーグルサイエンスフェアに出したものです。

こうした科学的な見地を企業が取り入れてくれれば、ガイドラインは増えると思います。

中尾 教授
企業は出したくないのでしょうか。
古林
想像がつきません。

グーグルサイエンスフェアでこれがアワードを取ったのは2014年のことです。

SNSを運営する企業がこの仕組みを知らないはずはない。

営利の面に偏っていて、若年層のいじめに対して本気で取り組んでいるとは言えません。

IT企業は便利な一方、その使い方で人々が苦しんでいることを見なければならないと思います。

中尾 教授
SNSのコンサルタントのような、使い方のプロフェッショナルの人はいるのですか。
古林
それがまだいないんです。

技術のことを知っていれば簡単で、親が子どもの顔写真を登録し、AIで画像検索させて「この子はあなたの子どもではありませんか?」というアラートを出すことは実現できます。

でも、保護者が企業にこうした要求をできないくらいリテラシーが低いのが問題です。

保護者から、「AIを使えば実現できる」とか、「SNSイジメをなくすポップアップはグーグルサイエンスフェアでやっていたでしょ」という要求をIT企業に出していかなければなりません。

でも、現時点で学校で講習をしているのは「スマホを触らせてはダメです」という「禁止しかしない」人たち。

中尾 教授
そういった講習が、学校側からしても効果的ではないという判断にはならないのですか。
古林
数年前、地元の教育委員会からスマホとインターネットの危険性についての講演依頼を受けました。

そのときは「スマホを使わせてはいけません」という講演をしてくださいと指定されたんです。

なぜ、そういう流れになるのかと考えてみると「親の負担」という側面があると思います。

何かあったら全て「親がやるべき」となってしまうので親としては手っ取り早く「使ってはいけない」という方が楽な面はあるでしょう。

SNSを使わなければ事件・事故には巻き込まれにくくなりますから。

中尾 教授
ただ、使わなければその恩恵も受けられない。
はい。

だからこそ私たちのようにIT関連の仕事をしている大人たちが保護者や子どもたちに情報を届ける役目があると思っています。

中尾先生は私たちが企画している「EXA KIDS」に積極的に関わってくださっていますね。

中尾 教授
ええ。

「イベント」という形がすごく良いな、と。

同じことを真面目に教えるよりもイベント性をあげるとみんな集まってくる。

そうすると相乗効果でメディアからも注目されるし「プログラミング」が違った側面で取り上げられる。

そこに賛同しました。

初回で3000人近くの集客があったのは、とてもインパクトがありました。

私たちが集めようとしても、とてもできません。

そこが一番の魅力でした。

今後、「EXA KIDS」がどうなってほしいと考えていますか。
中尾 教授
トップアップ・ミドルアップ・ボトムアップという現在の取り組みを死守してほしいですね。

それから、「EXA KIDS 東京」といったように全国区になってほしい。

今は海外の方はあまり参加していないと思いますが、世界への扉をぜひ開いてほしいですね。

古林
2020年はアジアからの参加者を募るために動いているところです。

期待していてください!

【EXA KIDS 座談会企画】 九州工業大学大学院 中尾 基 教授編 〈了〉

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